書籍:「世界経済危機 日本の罪と罰」
著者:野口悠紀雄 (ダイヤモンド社刊)

2007年8月、仏BNPパリバが傘下のファンドの資産凍結をしてその後金融不安が本格的に発生し、昨年9月15日に米リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけに 凄まじい速さで世界中の国々が経済危機に見舞われている。
著者はリーマン破綻後の2ヶ月後にこの本を出し、我々に警鐘を鳴らした。磐石だといわれた日本のメガバンクも先日の新聞発表では1から3期の連結決算で三菱UFJフィナンシャル・グループとみずほフィナンシャルグループが赤字に転落し、他の4グループも大幅減益になるようである。また、トヨタは2008年3月期の営業損益で2兆2703億円の黒字を計上したが、今期3度目の業績下方修正となり、4500億円の営業赤字に転落する見通しである。
著者が昨年10月に書いていたころより3、4ヶ月が過ぎ、その悪い方への予測は残念ながら見事に当たって来ている。
この世界を揺るがせている金融危機の主犯は米国であることは問題ないが、米国のみでは今回の経済危機は引き起こせない。日本、中国、産油国等の共犯者がいたと言う。これらの国々では貿易収支が巨額の黒字となり、得られたそのドルを大量に米国へ投資した。また、わが国は超低金利政策等により円安を続け、円を借りてドルで運用させ米国内で住宅バブル・金融バブルを増殖させた。
つまり、低コストの資金を全世界、特にアメリカにばら撒いた。今までの日本の好景気は、対米輸出の増大と異常な円安といういつまでも続けられない二つの要因に支えられて来たものであった。
それらの日本の罪に対して、それでは、日本の受ける罰はどのようなものであろうか。いやそれはすでに、もう受けているし、この後も大きな変動が待ち構えている。
日本の対外資産は巨額の為替差損が発生しているし、個人レベルでも、外貨預金、外貨投資信託などに投資した人、FX取引で外貨を購入した人は大きな損害を受けている。また、今後為替は円高になっていき輸出産業はこのままでは成り立たなくなってしまう。現にトヨタは1円の円高で400億円の営業利益が吹っ飛ぶという。それが上記の今年3月期予想の赤字の理由である。
これからの日本は未曾有の大不況が襲う。自動車や電気産業のようにこれまで円安で好調だった輸出関連業界が円高により大幅な利益減と減産になり、当該企業のみでなく、裾野が広いがゆえに下請けや素材メーカー等を含めた関連企業にもおよび、派遣社員の減量や今春新卒の学生の内定取り消しという形になってきた。
今後は関連企業の倒産、失業の増大などをもたらす。次に、金融機関の不良債権の増大と株価下落による自己資本の現象が出てくる。これも上記のメガバンクの赤字決算に現れている。
このように悪くなっていく実体経済と金融経済の影響によって、われわれは今まで経験したことの無い未曾有の事態に陥って来る。本日、2月10日の朝刊には日産が最終赤字2650億円の予想、そして国内1万2千人(内正社員4千人)を含み世界中で2万人を削減するという記事が現れた。
政府の政策を頼りにせず、我々は自己防衛しなければならない。野口氏は下記のような対処法を述べている。参考にしていきたい。
1.投資について:
1) 国内株:個別株への投資は分散投資の観点から合理的なものではない。
投資における最重要なことは分散投資である。
2) 投資信託:個人が株式投資をするのであれば、個別株を買うのでなく、投資信託を利用するのが賢明である。
3) 不動産:少子化の影響で、長期的に日本の不動産は値下がりする。
4) 海外の債権への投資:「グローバル・・ソブリン・オープン」は、信用力の高い国の国債や政府機関債に分散投資する投資信託であるが、海外との金利差の利益が為替差損でオフセットされてきている。これまで円安が続いたので運用成績が良かったが、これからは円高と欧米の利下げで悪化するであろう。
5) 海外の株式:日本国内投資では充分な投資収益を実現できないから、海外投資を考えざるを得ないが、新興国の株は手を出さない。
また、海外投資は為替リスクが伴うので、分散投資を勧める。米国ではグーグルのようなハイテク企業が、米国全体の落ち込みでも成長を続ける。 つまり、デカップリング(非運動性、切り離し)の可能性がBRICsでなく、米国の中に現実化して来ている。
6) FX取引:円高で大きな為替差損が発生している。
7) 定期預金:今は一番安全である。
8) 教育投資:若い人は自分への投資を行うべきである。
2. 氏の対処法を見ると、我々庶民が考えていることに非常に近い。
すなわち、私も、現在はお金を使わずにひたすら持っているほうが安全と思っている。
具体的に、当面私は下記の指摘事項を順守していきたい。:
1) 投資における最重要課題は「分散投資」であることを肝に銘じる。
2) 資産運用に関する知識・理解度を高めていく。
3) 事態が落ち着くまで定期預金で運用して待ち、落ち着いてから成長する国・セクターへの分散投資を考える。
4) もし株に投資するならば、それぞれの国内のデカップリング企業に注目しても良いのかも知れない。例えば、米国のハイテク産業、日本の内需拡大関連企業等である。
以上